天体写真において「ノイズ」と「」は色々な場合で良く聞きますが,この2つの言葉を区別せずに使っている場面に良く遭遇します.ここではその違い説明します.
キーワード
- ノイズ
- S/N
- コンポジットの意義
まとめ
- コンポジットはシグナルの値を大きくするために行う
- コンポジットをすることでシグナルの合計値は大きくなるが,同時にノイズの値も増える.
- シグナルに比べてノイズの増加割合は鈍いので,コンポジットの結果S/Nは向上する
- 加算でも平均でも得られるS/Nは全く同じ
望遠鏡で集められた天体光がCCD/CMOSに入射し,あるピクセルに電子が溜まった状態を考えます.
注目するピクセルの出力値に関わる真の値,系統誤差,ノイズのイメージは下図のようになるでしょう.直方体の高さがそれぞれのカウント値を表しています.
この図の中で
シグナル=「真の値」
「ノイズ」
です.
(「ノイズ」はあくまでもです.正確な関係は「ノイズの数学」で説明しています.)
ノイズとはピクセルの出力値に含まれるトータルの偶然誤差のことです.
これにはダークノイズ,背景光ノイズ,天体光のフォトンノイズ,リードアウトノイズ等が含まれます.
とはノイズと真の値との大きさの比のことで,割り算で表せます.一般に真の値が大きくなればノイズもその分大きくなるのですが,大抵の場合に比べての増加割合は鈍いため,真の値が大きくなればなるほども大きく(良く)なります.
露出時間を伸ばしたり加算コンポジットを行うと,シグナルが大きくなるのでも大きく(良く)なります.
平均コンポジットの場合は,コンポジット後のは大きくならないので,S/Nが向上しない,と言われることがありますがこれは間違いです.平均とは,一度加算した後に画像枚数で割ることによって得られます.割り算後にSもNも1/Nになるため,結果的にS/Nは変化しません.つまり,加算でも平均でもコンポジット後のS/Nは同じなのです.[1] … Continue reading
天体写真撮影では非常に淡い天体を撮影するので,一般にが小さくS/Nが悪くなってしまいますが,コンポジットを行いを大きくすることでS/Nを向上させ,相対的にノイズを小さくするのです.
(ここでは概略のみを述べました.正確な話を知りたい方は「ノイズの計算」シリーズの項をご覧下さい.)
References
↑1 | ただしこれが成り立つのは画像処理ソフト内部の計算において十分大きな階調空間を使える場合です.例えばStellaImage等で使うFitsファイルには十分大きな階調空間があるので,加算でも加算平均でもは変わりません |
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