ここではノイズの種類とその特性についてみていきます.
キーワード
- フォトンノイズ(ショットノイズ)
- バイアスノイズ
- ダーク
- ダークノイズ
- リードアウトノイズ
- 光害/背景光
ポイント
- それぞれのノイズの特性を理解する
- 幾つかのノイズは原理的に減らすことが出来ないものがある
「ノイズとは何か? 1」で誤差には「系統誤差」と「偶然誤差」の二種類があり,このうち偶然誤差=ノイズであることを説明しました.
系統誤差としては大まかに以下のものが挙げられます.
- 光害/背景光 (天文学者は単にSkyと呼ぶこともある)
- CCD/CMOSのバイアス
- ダーク (ダークノイズとは異なるので注意)
- CCD/CMOSのピクセル感度ムラ
偶然誤差(ノイズ)としては大まかに以下のものが挙げられます.
- 天体光に含まれるフォトンノイズ
- Sky光に含まれるフォトンノイズ
- フラット画像に含まれるフォトンノイズ
- ダーク画像に含まれるフォトンノイズ (いわゆるダークノイズ)
- リードアウトノイズ
まずは言葉を1つずつ説明していきます.
系統誤差
・光害,背景光 (Sky光)
本来撮影したい天体からの光(=真の値)に加えて地球大気の発光や光害(街明かりなどが地球大気で散乱されたもの)由来の光が加わってしまう.この天体以外の光のことを背景光(Sky光)とよびます.
・ダーク (ダークノイズではない)
CCD/CMOSは内部光電効果と呼ばれる物理現象を用いて入射光(光子)を電子に変換します.しかし光子が来なくても,CCDのピクセル内では一定の確率で電子が発生します(これを熱電子といいます).この熱電子がダークで,本来の光の入射によって発生する電子とは異なるので,系統誤差となります.熱電子の発生量はCCDの温度に依存し,温度が高くなると莫大に増えます.CCD/CMOSを冷やすのは,この熱電子の発生を抑えるためなのです.
・バイアスカウント
CCD/CMOSでは,出力値のふらつきによりピクセルが負のカウントにならないように,露出時間がゼロの状態でもあらかじめ若干の正のカウント値を持つように設計されています.このカウント値がバイアスカウントです.
・CCD/CMOSの感度ムラ
CCD/CMOSカメラには製造の過程でどうしてもピクセル毎の感度にバラツキが生じます.これをピクセル感度ムラといいます.
偶然誤差(ノイズ)
・天体からの光にのるフォトンノイズ
・Skyにのるフォトンノイズ
・フラット画像にのるフォトンノイズ
これらは「フォトンノイズ(ショットノイズ)とは何か?」で詳しく説明しますが,天体・Sky・フラット光源からやってくる光子数は必ずしも行儀よく等間隔にはやってきません.その結果,撮影するタイミングによって,得られるカウント値が異なり,誤差の要因になります.これはカメラの性能には無関係で減らすことはできません.
・ダークにのるショットノイズ(いわゆるダークノイズ)
このノイズは光子は関係しません.既に述べたように,ダークは熱電子が一定の確率で発生することによって生じますが,単位時間当たりに発生する電子数は測定タイミングによって異なります.このばらつきがダークのショットノイズです.
・リードアウトノイズ
CCD/CMOSの各ピクセルに貯まった電子を電子回路で読み出して数える際に,電子回路内で発生するのがリードアウトノイズです(このノイズはガウス分布に従います).
ここで特に知っておいて欲しいことは,以下の三つのフォトンノイズはカメラの性能に関係ない(減らすことが出来ない)ということです.
・天体からの光にのるフォトンノイズ
・Skyにのるフォトンノイズ
・フラット画像にのるフォトンノイズ
これではノイズが減らせないので困ったと思うかもしれませんが,コンポジットという操作によってシグナルとノイズの比(S/N),実際は上手く対処出来ることが後に分かります.
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