天体写真で必ずと言ってよいほど必要になるダーク減算処理.ここではダーク減算処理の原理と手順について説明します.
今回のポイント
- ダーク減算処理の原理が分かる
- ダーク減算処理の目的が分かる
- ダーク減算処理の方法が分かる
目次
ダーク減算処理の原理
デジカメやCCDカメラは天体からの光を電気信号に変換して記録します.しかし,光が全く来ていない場合でも原理的に常にわずかな電流が流れ続けています.これを「ダークカレント(暗電流)」といいます.光が来ていない(暗い)のに電流が流れるので暗電流と呼ばれます.
光が来ていようと来ていまいとダークカレントは常に流れ続けるため,ライトフレームにもダークカレントの成分が含まれています.このライトフレームに含まれるダークカレントを引き算によって取り除くのがダーク減算です.
下の図はバイアス減算処理後の一枚のライトフレームに対してマスターダークの減算を行い,ダーク減算後の画像が出来るイメージ図です.
角柱の高さはそれぞれのピクセルのカウント値を表しています.
ダーク減算によってライトフレーム中のダークカレントが消えます.それと同時に,ダーク減算後の画像にはマスターダークのダークノイズ a が加わります.
ダーク減算の目的
ダークカレントは天体写真上ではCCD/CMOSのホットピクセルやアンプノイズや熱カブリとして見えます.ダーク減算処理の目的はこのホットピクセル,アンプノイズ,熱カブリを取り除くことです.
ここで注意しておかないといけないのは,ダーク減算ではライトフレームのノイズを取り除くことは出来ません.それどころかダーク減算によってライトフレームのノイズは増えてしまいます.
ダーク減算の手続き
- マスターダークを作成
- 天体を撮影するのと同じ条件(気温・感度・露出時間)でカメラに蓋をして光が入らない状態にし,真っ暗な画像を出来るだけ多く撮影する.これをダークフレームと呼ぶ.
- 各ダークフレームから事前に作成したマスターバイアスを減算する.
- 2で出来た画像をメジアンまたは加算平均コンポジットしてマスターダークを作る.
- バイアス減算処理後の各ライトフレームからマスターダークを減算(引き算)する.
これがダーク減算の手続きです.
カメラに蓋をして真っ暗な状態で撮影することで,ダークカレントのみを写すことが出来ます.
そうして撮影したダークフレームをコンポジットにより平均化したものをマスターダークと呼びます.
ダーク減算に使うソフト等
実際にダーク減算を行うにはコンポジットや減算処理を行える画像処理ソフトを使う必要があります.
フリーソフトでは直焦点撮影向けにはDeepSkyStacker等があります.
有料ソフトではアストロアーツさん発売のStellaImageや古庄歩さんのRAPがある.
(PhotoshopではRAW画像をそのままベイヤー配列のカウント情報として読み込めないので,ダーク減算は出来ません)
それ以外にも海外のソフト等色々あるので,気になる方は検索してみると面白いと思います.
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